【地理】アスワンハイダム~エジプトの治水事業

 古代エジプトは「ナイルのたまもの」と呼ばれていたように、ナイル川の氾濫によってその肥沃さが担保されていました。しかし現在、多くの住宅が建てられたナイル川下流部では、むしろその氾濫は邪魔なものとなってしまいました。

 

 そんな状況に加え、工業化を推し進めるための電力確保の目的もあり、1950年ごろのエジプトのナセル大統領は「アスワンハイダム」の建造を決定しました。

 

 その道のりは平坦なものではありませんでした。ナセル大統領がソ連に接近することを嫌ったアメリカが融資を取りやめたのです。資金確保のためにスエズ運河を国有化しようとしてスエズ戦争が勃発するなどのゴタゴタもありましたが、最終的にはソ連の融資によって建築が開始され、1971年には完成しました。

 

 この建築過程で、「アブシンベル神殿」という神殿がダムに沈むことが明らかになりました。そこで、大胆にもこの神殿を移転するという大規模な工事を行いました。誰もが知っている「世界遺産」も、この工事をきっかけに始まったものです。

 

 アスワンハイダムが完成した結果、エジプトではナイル川河口の侵食、河口付近の漁業の不振などの問題が発生してます。これからエジプトはどのような政策をとってゆくのでしょうか。